
不動産を相続した後の売却はどう進める?流れと手続きの基本を解説
不動産を相続したものの、どのように売却を進めればよいのか不安を感じていませんか。不動産の相続と売却には複雑な手続きが伴い、流れを正しく理解しておかないと想定外のトラブルに発展することもあります。この記事では、相続発生から名義変更、売却手続き、売却後の税務処理まで、順を追ってやさしく解説します。はじめて不動産の相続と売却をお考えの方も、しっかりと準備ができる内容ですので、ぜひご一読ください。

相続発生から相続人の確定までの基本ステップ
まず、相続が発生したら、最初に確認すべきは遺言書の有無です。遺言書がある場合は、その内容に従って相続が進みます。遺言がない場合には、相続人全員で遺産分割協議を行い、話し合って分け方を決めます。遺言があるかどうかにより、以降の手続きが変わりますので、まずは故人の遺志を確認することが重要です。
次に行うのが「戸籍の収集」です。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得し、誰が法定相続人なのかを明確にします。戸籍をさかのぼって調べるのは手間ですが、相続人の抜け漏れがあると遺産分割協議そのものが無効になるおそれがあります。確実に相続人を特定することが大切です。
その後、相続人全員で遺産分割協議を進め、合意が得られた内容を「遺産分割協議書」にまとめます。協議書には、相続人全員が署名・実印押印し、印鑑証明書を添付することが求められます。また、換価分割(不動産を売却して得た代金を分ける)などの方法を明記すると、後の税務上のトラブルを避けられます。
| ステップ | 内容 | 留意点 |
|---|---|---|
| 1. 遺言書の有無確認 | 遺言書が存在するかを調べる | 遺言があれば、それに従い手続きを進める |
| 2. 戸籍収集による相続人確認 | 出生から死亡までの戸籍謄本を取得 | 相続人の特定漏れがないよう注意 |
| 3. 遺産分割協議と協議書作成 | 相続人間で協議し、協議書を作成 | 署名・押印・印鑑証明書が必要 |
相続登記と名義変更の手続き(売却の法的準備)
不動産を相続して売却するためには、まず「相続登記」を確実に進める必要があります。この手続きには、いくつかの重要な注意点がありますので、順を追って整理します。
第一に、相続登記が義務化された背景には、登記がされないまま相続が繰り返された結果、所有者不明の土地が増え、公共事業や利活用に支障が出るという社会的課題があります。そのため、令和6年4月1日から相続登記が法的に義務付けられ、相続の開始および不動産の取得を知った日から3年以内に登記する必要があります。それ以前の相続についても義務の対象となり、最長で令和9年3月31日までに申請しなければならない定めです。期限内に手続きしないと、正当な理由がない限り十万円以下の過料が科されることになります。
社会的背景として、所有者不明土地が九州ほどの広さに相当するというデータもあり、その解消が法改正の大きな目的です。社会への悪影響を防止するためにも、法的義務として早めの登記が望まれます。
次に、相続登記のために必要な書類や手続きについてです。主に必要なものには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や相続人全員の戸籍謄本、遺産分割協議書などがあります。また、登録免許税(固定資産税評価額の4千分の1)、書類取得にかかる費用、そして司法書士への報酬が発生します。司法書士に依頼すれば、手続きの手間を大幅に減らせる一方、概ね五万円から十五万円程度の報酬が必要です。自ら手続きする場合は実費のみで済むというメリットはありますが、書類収集やミスのリスクを考慮すると、専門家への依頼が安心です。
最後に、相続登記を完了することで、法務的に所有者が明確になり、初めて不動産を売却できる状態となります。名義が旧所有者(たとえば故人)のままでは売却できませんし、売却後の所有権移転登記も法的に認められません。つまり、安全かつ確実に売却を進めるためには、相続登記による名義変更は不可欠な法的準備です。
以下の表に、相続登記の概要をまとめます。
| 項目 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 義務化の開始 | 令和6年(2024年)4月1日から | 過去の相続も対象・過料のリスクあり |
| 必要書類・費用 | 戸籍謄本、遺産分割協議書、登録免許税等 | 司法書士依頼は5~15万円程度(手間軽減) |
| 売却可能状態 | 名義変更後に売却や所有権移転が可能に | 名義が旧所有者のままだと売却不可 |
売却準備から売買契約までの流れ(実際の売却行動)
相続登記を終えたあとは、いよいよ売却に向けた具体的な行動が始まります。ここでは、査定依頼から媒介契約、さらには買主との条件調整を経て売買契約に至るまでの流れをわかりやすく整理してご紹介します。
まず、名義変更が完了したら、すぐに査定依頼に着手しましょう。相続不動産に関しては、取得費加算など節税につながる特例の適用に向け、できるだけ早く動くことが望ましいとされています。査定には、机上査定と訪問査定があり、それぞれの方法で価格の根拠や適性をしっかり確認することが大切です。
| ステップ | 内容 | 目安の期間 |
|---|---|---|
| 査定依頼 | 机上査定→訪問査定を依頼し、適正な査定価格を把握 | 机上:数日以内/訪問:1週間程度 |
| 媒介契約の選択 | 一般・専任・専属専任の中から、販売戦略に合った契約を選ぶ | 査定後すぐ |
| 販売活動開始 | 広告掲載、現地案内など仲介会社が主体となって実施 | 3か月前後 |
査定に基づいて複数の業者の提案を比較し、自分の希望に沿う信頼できる業者を選びます。そのうえで媒介契約を締結しますが、契約の種類にはそれぞれ特徴があります。
一般媒介は複数業者に依頼できる自由度が高い一方、登録義務や報告義務がないため、販売活動の透明性を重視したい場合は専任媒介や専属専任媒介が選ばれることが多いです。専任・専属専任であれば、物件情報を不動産流通機構(レインズ)に掲載し、最新の進捗報告を受けられる点が安心です。
販売活動が開始されると、買主側から価格交渉や引渡し条件などの希望が提示されます。特に値下げ交渉や解体の有無に関する要望が出されることが多いため、譲歩できる範囲や最低限の条件を決めておくことが重要です。
最終的に条件がまとまると、売買契約の締結に進みます。ここでは手付金の額や引渡し時期など具体的な条件が確定し、正式に売却行動が完了します。ただし、査定額と実際の売却額が一致しないこともあるため、売主としては価格設定や交渉の取り組みに柔軟さを持たせることが成功へつながります。
引渡し・決済と税務手続き(売却後の対応)
相続した不動産を売却した後には、引渡しと決済の手続き、さらに税務対応まで確実に進めることが重要です。ここでは、残代金の受領から所有権移転登記、税務申告や特例の活用まで、漏れなくわかりやすくご案内いたします。
| 項目 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 残代金の受領・所有権移転登記 | 買主から残代金を受け取り、司法書士などを通じて所有権を買主名義に変更します。 | 決済・登記の流れを正しく理解し、実務トラブルを防ぎます。 |
| 譲渡所得と確定申告 | 売却した翌年の確定申告期間(2月16日~3月15日)に、譲渡所得の申告を行います。 | 譲渡所得がプラスでも特例を受ける場合でも、必ず申告が必要です。 |
| 特例・控除の活用 | 相続税の取得費加算の特例や、空き家や居住用財産に関する3000万円特別控除など、状況に応じた制度を適用できます。 | 併用できない制度もあるため、適用の可否を確認しましょう。 |
まず、売買が成立した後は、残代金を確実に受け取ったうえで、司法書士に依頼して所有権移転登記を行います。これにより不動産の名義が正式に買主へ移り、売却手続きが完了します。
次に、譲渡所得の確定申告です。不動産を売却した翌年の2月16日から3月15日までの期間に申告を行う必要があります。譲渡所得がプラスであればもちろん必要ですが、特例により譲渡所得が実質ゼロになった場合でも、適用を受けるには確定申告が必須ですのでご注意ください。
さらに、税負担を軽減するために利用できる特例として、まず「相続税の取得費加算の特例」があります。これは相続税の一部を取得費に加えることで譲渡所得を減らすしくみで、相続開始の翌日以後3年以内に売却することが条件です。
また、「居住用財産に対する3000万円の特別控除」や「空き家特例」による控除制度があります。相続人や被相続人が居住していた不動産であれば、所定の要件を満たすことで、譲渡所得から最大3000万円を控除できます。空き家を売却する場合の特例と取得費加算の特例は併用できませんので、どちらを選ぶか慎重な検討が必要です。
最後に、これら税務対応を忘れてしまうと、後々ペナルティ(無申告加算税や延滞税など)が科せられる場合があります。提出書類の不備や期限の遅れがないようにしっかりと準備しましょう。
まとめ
不動産を相続し売却を検討されている方に向けて、相続開始から相続人の確定、相続登記や名義変更、売却活動、さらに売却後の税務手続きに至るまでの流れをご案内しました。不動産の相続売却は多くの手続きが重なりますが、必要な準備とステップをきちんと把握することで、安心して進めることができます。初めての方も、正しい流れを理解しておくことで、後から困ることを防ぐことができます。ご不明点がありましたら、お気軽にご相談ください。
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